有姿除却

ますは、結論から。

有姿除却が税務上認められるためには、以下のものを用意できれば問題ありません。
① 現状、客観的に使えない状態の証明(ex.対象資産の認可期間の終了証明、ほこりをかぶった写真)
② 有姿除却した固定資産から製品が作られていない証明(ex.電力会社との電力量変更の契約書、生産管理日報)
③ 取締役会議事録or稟議書(有姿除却をするに至った経緯・理由、今後使用しない宣誓をしたもの)


まずは、有姿除却(法人税基本通達7-7-2)の説明から
次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする。
(1)その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
(2)特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの

有姿除却は、会計上は問題にならないけれど、税務上は問題になるようです。納める税金の額は複数年のスパンでは同額なのですが、税金を早く徴収したい日本国と税金を後回しにしたい企業側での価値観の相違から生まれています。この対立を公平に線引きするために、法律は客観的な一定の要件を設け、適切な納税の仕組みを作り上げています。この一定の要件は、上述したものですが、実務的には特にハードルの高いものはないです。しかしながら、企業側の準備が甘いようで、最高裁の審判を求めるものもあり、事例収集には事欠きません。

次に判例を使って、税務上認められる要件への当てはめです。
① 未使用証明 ② 未稼働証明 ③ 未来未使用証明  判例
A   △      △       △      ✖
B   〇      〇       △      ✖

A:最高裁判所第三小法廷 平成 8年 2月27日 平成5年(あ)第139号
B:大阪高等裁判所(控訴審)平成 4年12月25日 平成3年(う)第125号

こうやって見ると、判例上はみんな認められないと思われがちですが、法律解釈に見解の相違があるからこそ裁判になるのであって、見解の相違が起こらないように、条文通りに客観的な証拠を集める必要があります。

2018年11月25日